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作品解説《Noemata No.2》

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映像 ロバート・ダロル

音楽 中村滋延

■作品解説

(映像について:Robert Darroll)

アートの製作においては、デジタル技術が2つの重要な影響を与えている:

第一に、イメージバンク、クリップアート、テクスチャー、デジタルビデオ素材等、アーティストに膨大なレディーメード・マテリアルの資源を提供する。そのため、素材となる新たなマテリアルを作成することは基本的に重要なことではなくなり、それよりも、既存の素材を利用することが求められることになる。

第二に、デジタル技術によりレイヤー(重ね合わせ技法)を用いて素材を組合わせることができることから、選択した素材によりデジタル・コラージュを容易に作り出すことが可能になる。したがって、アート製作の実際の作業は、アーティストのコンセプトを表現する新しいフォームを創りだすための素材の選択と組合わせに集約される。このアニメーションに用いられている素材の多くは、ここで私が簡単に入手できるテレビや印刷物が元になっている。

この短編は、東京での生活に対する私の最初のリアクションを表現したエッセーである。これは、古風な神社や笑顔の芸者など、一般的に西洋人が思い描く日本ではなく、蛍光を発するネオポストモダンなテレビ画像のなかに私が見た様々なイメージのなかのアジアの大都会の騒々しく、けばけばしく、発光し変化し続けるジャングルである。(Robert Darroll)

(音楽について:中村滋延)

映像のための音楽を作曲するには、映像と音楽との関係付けをどのようにするかによって、いくつかの方法がある。今回、私が用いた方法は、映像の性格・特徴を音楽によってひたすら増幅することであった。これを「映像と音の“重複”的な共同関係」と呼んでいる。

この映像では、現代日本社会の猥雑で混沌とした様子が、テレビ映像や印刷物を素材とした巧みなデジタル処理によって描かれている。それは、西洋人が、古風で趣きある寺院や微笑む芸者に代表される日本をロマンチックに描くのとは対極にある。作品はこの映像作者にとっての東京での生活の第一印象についてのまさにエッセイである。

私もテレビからの音声や街の拡声器からの音を映像との類似関係で使用した。それらを映像の画面上のイメージに合わせてデジタル処理し、映像の時間軸上の変化に合わせて編集した。映像の時間軸上の変化は、テレビ映像や印刷物を素材としたデジタル処理部分(コラージュ部分)と純粋にCGで作画された部分(CGアニメ部分)とが交互に登場するという形式に基づいている。したがって、映像の性格・特徴を増幅することだけを目的に音楽を作っていたことが、結果としてバランス取れた形式感のある音楽をつくることにつながったように思う。

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