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作品解説《レリーフの回廊(交響曲第三番)》

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第1楽章「乳海攪拌」— 第2楽章「神々の戦い」— 第3楽章「天国と地獄」— 第4楽章「アプサラの森」

(楽章間は休みを置かず,続けて演奏される。)

楽器編成

Fl.3(Pic.)/Ob.2/Eh./P-Cl./Cl.2/Fg.2/Cfg./ Hr.4/Trp.3/Trb.3/Tb./ Hrp./ Timp./S-Dr./Trgl./Wbl./Cym./Vibr./Sus-Cym./B-Dr./ Str.

最近,私は,創作活動の大半を音楽系メディアアートの領域内で行っている。音楽系メディアアートとは,創作・上演にコンピュータを活用し,かつ視覚要素を構成に取り入れた音楽作品のことである。コンピュータ科学や美術・映像・舞踊などとの結びつきが作品の成立には不可欠な領域である。

現代を呼吸しているかぎり,現代の科学技術や,他の芸術分野の先鋭的な表現などに創作家としては無関心ではおれない。むしろそれらに貪慾に関わらなければならないとさえ私は思っている。

だが,そうした一方で,どうしても西洋芸術音楽(いわゆるクラシック音楽)的な作曲の世界からも離れられないのである。現代日本において「交響曲」を作曲することに一体どのような価値や意味があるのかと考え込んでしまうことも多いのだが,作曲せずにおれないのである。これは身体の中に染み込んでしまった“業”のようなものであろう。ちょっと大げさに言えば「これをやらねば死んでしまう」というような感覚である。

さて,この交響曲,「レリーフの回廊」というタイトルを持っている。この回廊は,カンボジアのアンコール・ワットやアンコール・トムのバイヨン寺院の回廊を指す。レリーフはそれらの回廊に彫られている。そのモチーフは主に神話や歴史である。このレリーフに魅せられて私はそこをすでに3度も訪れている。魅せられる要素は様々にあるが,今回の作曲に関連して言えば,造形に関する構成法である。それは,単純なモチーフ反復による画面構成,図の縦の上下位置によって表される幼稚な遠近法,人物事物の大きさの不一致,パターン化された顔の表情など,西洋芸術の造形観から言えば否定されかねないようなものばかりである。しかし,実際に向かい合った時にそれらの造形が発する圧倒的な迫力と,それによって生まれた感動は譬えようもない。また,仔細に見ていくと,上述の特徴は,全体のバランス上,表現としての意味に満ちていることが分かる。こうした構成法を,私は,今回の作曲の構成上の指針にした。視覚的な構成法を聴覚に単純に置き換えたりはしていないが,かなり影響は受けている。

もちろん,構成法以外にも,本物の「レリーフの回廊」とこの作品には密接な関係があるが,スペースの都合上,それついては割愛させていただく。

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