8月23日(日)アクロス福岡シンフォニーホールにおいて「アクロス弦楽合奏団」第3回定期演奏会を聴いた。演奏曲目は,ヴィヴァルディ『4つのヴァイオリンのための協奏曲ロ短調Op3 No.10 RV580』,メンデルスゾーン『弦楽八重奏曲変ホ長調Op.20』,チャイコフスキー『弦楽合奏のためのセレナードハ長調Op.48』であった。

アクロス弦楽合奏団は景山誠治の呼びかけによってアクロス福岡のオリジナル合奏団として2004年に発足した。当初はアクロス福岡で景山が実施しているヴァイオリンセミナーで学んだ若いヴァイオリニストが中心であったようだが,今年の第3回定期公演では錚々たる演奏家を,東京を中心に全国各地から集めている。

演奏は優れた演奏家の集まりであることを存分に感じさせる瑕疵のないものであった。ただ,その演奏は無菌培養された食物のようであって,まるでコクが感じられない。きちんと演奏されているのだが,ぐいぐいと聴き手を引っ張っていくような,音楽の持続感が不足している。例えば,チャイコフスキーのセレナードにおける第3楽章の再現部前及び第4楽章の再現部前の2箇所のゲネラルパウゼで,本当に音楽が中断されてしまった。音楽に持続感があればこのようなことは起こらない。

なお,この合奏団はアクロス福岡のオリジナル合奏団ということなのだが,年1回の定期演奏会のために全国から演奏家を寄せ集めるだけで,どうアクロス福岡と関わっているのだろうか。もっと言えば,福岡県や福岡市の音楽文化とどう関わっているのであろうか。今のままだと,外来のオーケストラや日本の他都市のオーケストラの福岡公演となんら変わるところがない。せっかく,アクロスの名前を冠するのであれば,そうしたものとは異なる視点で,また長い視野で,地元の音楽文化振興に積極的に寄与するようなことを少しでもしてほしい。そうしたことを切に希望する。そのための方法はいくらでもある。ただし,必要なのは目先の結果を求めないことだ。