第12回嶺南国際現代音楽祭が10月25日と26日の両日、大邱文化芸術会館アンサンブルホールで催された。日本からは私(中村滋延)と松岡俊克氏、二宮毅氏が九州沖縄作曲家協会会員として参加し、招待作品として私の《Wailing Song for Clarinet, Violin and Violoncello》と松岡氏《Music for Flute solo》が演奏された。二日間でコンクールを含む4つのコンサートが催され、都合29作品が上演されるという盛りだくさんの内容であった。演奏は大邱の音楽家とこの音楽祭のためにドイツから招聘されたTrio Nexusによってなされた。上演29作品の内訳は、地元在住の作曲家作品23曲の他、日本人作曲家作品2曲、Trio Nexusのレパートリーであるドイツ人作曲家作品4曲である。なお、地元在住の作曲家作品23曲のうち、12曲が女性作曲家作品であった。

音楽祭の主催者である嶺南作曲家協会と九州沖縄作曲家協会は深い関係を持ち、相互に作曲家を招待しあい、作品の上演交流を続けている。

私自身、これまで何度も韓国を訪れているが、大邱は初めてであり、また九州沖縄作曲家協会の関係で韓国を訪れたことも初めてであったので、多くの驚きと新たな発見があった。何よりも、大邱という都市の文化度の高さに驚いた。音楽大学が5つもあり、常設のオペラ劇場があり、10近くのオペラ団があって時期を問わずオペラが上演され、また多くの美術館やギャラリーがある。現代音楽の演奏会も積極的に催されているようで、嶺南国際現代音楽祭と同じ時期に大邱国際現代音楽祭があり、2週間前には東アジア作曲家協会のコンサートがあったという。正直言って、九州とは雲泥の差である。それにもかかわらず嶺南作曲家協会は九州沖縄作曲家協会にずっと熱い視線を注いでくれているわけである。

嶺南作曲家協会はソウル(=中央)に対して嶺南(大邱や釜山=地方)の独自文化発展のために活動し、東京(=中央)に対して独自の活動をしていると彼らが信じてくれている九州(=地方)に着目し、交流の手を差し伸べてくれている。その熱い視線や差し伸べてくれて手に対して九州沖縄作曲家協会は十分に応える必要がある。それには、九州沖縄作曲家協会の会員作曲家が一人一人がよりすばらしい作品を作るよう努力しなければならないし、彼ら嶺南作曲家協会の会員作品をよりよい条件で九州において上演しなければならない。また、すばらしい作品にはそのすばらしさをひろくアピールするよう努力しなければならない。そうしたことこそが、真の交流になるとあらためて思った。