Yoshiaki Mimura: “Wave and Motions” Concert for Timpani and Orchestra
三村恵章作曲:ティンパニとオーケストラのための「ウェイブ アンド モーションズ」
Timpani: Tetsu Nagano 永野哲 ティンパニ
Conductor: Hiroshi Ishimaru 石丸寛 指揮
Orchestra: Kyushu Symphony Orchestra 九州交響楽団
CD「永野哲の世界、Vol.1」TR-1001(Timpani Record)1996

この曲は三村が1984年に発表した“Wandering memories in a deep for Viola, Percussion and Piano”を土台としてこれを第1楽章、第2楽章に仕立て、さらに1985年に書いた“Waving mode II”の最初の部分を第3、最後の部分を第4楽章にして再構成した曲である。

4つの楽章は続けて演奏される。このYoutubeでは第1・第2楽章と第3・第4楽章とを分けている。

第1楽章第2楽章は1984年に発表した“Wandering memories in a deep for Viola, Percussion and Piano”を再構成して作曲されている。

第1楽章はそれ以前の三村の作品に較べクラスター音楽の影響は影を薄め、旋律が多用されている。もちろん調性的な旋律とは縁はうすく、フェードインで奏し始めた持続音が緩やかなグリッサンとを伴って発展していく様は美しい。旋律はまた管弦楽によるものと室内楽によるものとが交互に出現して聴き手を飽きさせない。ティンパニは表情豊かに彩り的に合いの手を終始加えていく。音楽的にきわめて高度に作曲されている。最後は急激なクレッシェンドで音がカットアウトする。(0:10-6:00)

第2楽章はフレーズの徹底した反復によって作られている。反復の素材となるフレーズは大まかに5つある。最初は木管楽器によるフレーズ。次に弦楽器のテンポの速いコラール風のフレーズ。そして金管楽器のアクセントを伴う打楽器合奏によるフレーズ。そこにマリンバによるフレーズが付加される。さらに弦楽合奏によるフレーズが加わり徐々に盛り上がりをみせるが、最後はピアノの和音に導かれて徐々に音量を減じて終わる。(6:04-10:54)

第3楽章は1985年作曲のピアノと打楽器のための「Waving Mode II」の最初の部分を本に作曲されている。ティンパニ独奏のd音の連打で開始され、きわめて表情豊かでかつ超絶技巧的なティンパニ独奏のパッセージが展開される。低音のクラスター的和音の持続に乗って高音木管群の細かい動きの音群が絡む。この組み合わせは反復される。(0:10-3:08)

第4楽章は頻繁に拍子が変化するもののTempo Guistoの指定通り速いテンポの周期的な拍を絶えず刻む運動的な音楽である。ティンパニ以外に低い音域のトムトム(つまり高い音域のティンパニ)も合わせて遣う。きわめて現代音楽的であるが、躍動感が表面手に出ているため親しみやすい音楽で、まさに協奏曲の最後を締めくくるにふさわしい。(3:08-7:35)