<読書ノート20180126>

明治政府が懸命になって解消を目指した当時の欧米先進国との不平等条約(通商条約)。今、それ以上にひどいと言ってもよいのが日米地位協定。明治政府は必死になって当時の不平等条約条約を改正した。しかし、戦後の日本政府はサンフランシスコ講和条約以降、基本的に占領時代からの日米地位協定をそのまま保持、不平等のまま。日本は独立国の体裁をなしていない。ドイツ、フィリピン、韓国等はみな粘り強く地位協定の不平等を是正してきた。しかし日本はそれをせず、地位協定がもたらす不利をほとんど沖縄に押しつけてきた。(本当は日本本土にとっても不利で、羽田空港離着陸の航路の設定が思うに任せないのはまさに日米地位協定のせい)。

日米地位協定のために、沖縄に多くの基地が集中し、特に人命は脅かされ、特に沖縄の女性は性的暴力にさらされ、さらに全世界的に見ても貴重な自然が破壊されている。

こうした現状を伊勢﨑賢治(東京外大教授、元国連PKO幹部)と布施祐仁(若手気鋭のジャーナリスト)が多くの資料をもとに解説するのが『主権なき平和国家』(集英社、2017.10)。

多くの日本人は沖縄の人々に苦難を押しつけることで、日米地位協定の問題を意識すらしていない。(罰があたるのではないかと心配。)

北朝鮮の脅威を安倍政権はやたら煽っているけれど、日米地位協定も脅威とは無関係ではないらしいことも本書では説かれている。