4月8日、アクロス福岡シンフォニーホール、團伊玖磨オペラ《夕鶴》、現田茂夫指揮、九州交響楽団、佐藤しのぶ(つう)、市川右近演出
最初のうち、題材・音楽の相貌・管弦楽法の相互関係がしっくり来ず、何となく入り込めなかったのが、徐々に引き込まれていき最後には大きな感動が。舞台美術(千住博)も最初は簡素すぎて貧乏くさい感じがしたのが、徐々に存在感をもって迫ってきて、じつに味わい深い。演出(市川右近)については特にこれという感想はない。ということはさほどまずくはなかったということだと思う。
音楽は丁寧に作曲されていて、たしかに良質のオペラだと思う。ただしオペラの題材としては「通」好みの題材で、これが日本を代表するオペラだというと、外国のオペラ・ファンは戸惑うだろうな。
佐藤しのぶが歌う主役のつうはところどころに声の艶が消えてしまうようなところがあったが、役にかける意気込みがすごく、まさに入魂の歌唱で、文句なし。
充実した時間を過ごすことができた。

4月13日、アクロス福岡シンフォニーホール、九州交響楽団331回定期「若きマエストロ日本初登場!」、ダニエーレ・ルスティオーニ指揮、ウェン=シン・ヤン(チェロ)
2014年度の最初の九響定期演奏会(331定期)を聴いた。会場はアクロス福岡シンフォニーホール。指揮者は若きマエストロという触れ込みで1983年生まれ(つまり30歳)のイタリア出身のダニエーレ・ルスティオーニ。
演奏曲目は、プッチーニのオペラ《マノンレスコー》間奏曲、ドヴォルザークの《チェロ協奏曲ロ短調》(チェロ独奏は台湾人のウェン=シン・ヤン)、ムソルグスキー(ラベル編曲)の《展覧会の絵》。アンコールにマスカーニ《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲。
ルスティオーニの指揮は小柄な体でまるでダンスを踊るかのような派手なアクションで、劇的効果を大仰に強調した演奏。強弱の差、テンポの差がありすぎて、間合いがなくて、まったく虚仮威しの演奏。聴こえるべき声部が聴き取れなかったり、楽器間の音量バランスがまさにアンバランスで、曲の構造が浮き上がってこない。
指揮の派手なアクションは正直言って目障り。また滑稽なことに指揮はチェロの独奏部分に対してもあり(例えばもっとヴィブラートをかけるなどの表情に対する合図)、チェロ奏者は弾きにくかったろうと想像する(何よりも協奏曲の独奏者に対して失礼、こんなの初めて見た)。なお、ヤンのチェロは派手さを表に出すことのないが堅実な演奏。別の指揮者で聴いてみたい。
《展覧会の絵》は表情の変化が派手すぎ。また、最後の〈キエフの大門〉では打楽器を派手に鳴らしすぎ。表現が下品。
演奏後、会場の拍手が鳴り止まなかった。派手な表情のせい。騙される人が多い(仕方がないけど)。
演奏には大きな不満(ただし断っておくが、九響に対してではなく指揮者に対して。九響は本当にうまくなっている)。
しかしコンサート自体には満足。満足の対象は曲と九響の演奏に対して、つまり作曲者・編曲者に対して。それだけにこの日の聴衆にもっと確かな指揮者で同じ曲目聴いてほしいね。きっと「目から鱗が取れる」体験を保証できますよ。

4月23日、福岡シンフォニーホール、佐渡裕指揮、兵庫芸術文化センター管弦楽団「SPECIAL CONCERT2014」
佐渡裕指揮の兵庫芸術文化センター管弦楽団(通称PACオケ、芸文オケ)をアクロス福岡で聴いた。このオケ、私はここ4年連続で7月の兵庫芸文オペラの際に聴いている。今年度の「コシ・ファン・トゥッテ」も聴きに行く予定。オペラの時は演奏にちょっとアラが目立つが、今日はそれがなかった。ただ、アクロスの会場に不慣れのせいか、私の席(2階最前列ほぼ中央)では楽器間の音量のアンバランスが気になった。金管の音量がやたら大きすぎ。特にピアノ協奏曲ではピアノの聴きどころがオケの音量に埋もれてしまっていた。
なお、芸文オケは定期会員が4800人(九響の6倍)で、佐渡裕人気のほどがわかる。だから定期は毎回3公演(費用対効果が抜群)。秘訣は地域密着とのこと(佐渡談)。たしかに芸文センター及び芸文オケにかける佐渡の思い入れには頭が下がる。顧みて、我が九響の音楽監督は………。 指揮はうまさだけじゃないのよね。曲目は、グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調(独奏はドミトリー・メイボローダ)、チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調「悲愴」
さて、終演後、楽屋に佐渡さんを訪ねたようとしたところ(昔、大阪のNHKなどで放送関係の音楽録音の仕事を一緒にしていた仲)、楽屋口でアクロス福岡の職員に(知らない顔ではないはずなのに)遮られて、「アポイントがないと入れません」とのきついお言葉。その方の仕事熱心の態度は見上げたものだが………、正直、その対応に割り切れぬ思いで帰路についた。

4月26日、九州大学椎木講堂、「こけら落とし演奏会」、小泉和裕指揮、九州交響楽団
九州大学椎木講堂こけら落とし演奏会を聴きに行った(4月26日)。小泉和裕指揮の九州交響楽団の演奏。この講堂は三洋信販の創業者椎木正和氏の寄附によってたてられたもの。ちなみのこの日の演奏会も椎木氏の寄附によってなされている。したがって曲目などは椎木氏の思い出の曲ということで、「ローエングリン第3幕前奏曲」「くるみ割り人形」や「運命」などポピュラーな名曲が並ぶ。
椎木講堂は3000人収容の多目的ホール。演奏会用ホールとしては舞台が狭く2管編成がせいぜい。ピアノ協奏曲を行うことは無理。
音響は客席の場所によりかなりその質が左右されそう。音響設計者がかなり頑張られたおかげで当初予想をかなり上回ったが、しかしそれでも専用コンサートホールのようなわけには到底いかない。
当初は九響のサブ・フランチャイズというもくろみもあったようだが、このままではちょっと難しいね。もったいない。
こけら落とし演奏会は寄付者の好みと体力にあわせてプログラムが組まれたため、通常の演奏会とは異なる。でも、その事情を知っていない者にとってはなんとも中途半端な演奏会だった。
なお、小泉和裕さんは九響の音楽監督なので、こういう会の場合、彼が演奏前に椎木氏への謝辞を述べ(椎木氏は九響へも多額の援助をしている)、九響への応援依頼を客席に向かって述べてもよいのではないか。小泉氏の指揮そのもののうまさは否定しないが、こういう思いの表現がお粗末で、なにか共感するものがない。

4月26日、西鉄ホール、14+劇団HIT!STAGE「血の家」
第8回福岡演劇フェスティバル、14+劇団HIT!STAGEの「血の家」を西鉄ホールで見た(26日)。作:森馨由、演出:中嶋さと。
1時間40分ほどの長さで、前半、私自身、ノリがいまいちだったけれど、だんだん引き込まれていった。いわゆる家庭劇。
まあ、いろいろと勉強。あと5公演ほど見てみよう。