1988年に私が書いた研究ノート「R・ハウベンシュトック・ラマティの音群的作曲技法—タブローの分析を中心にして—」(『ベルク年報1988/89』)のPDFをアップします。

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Roman Haubenstock-Ramati(1919−1994)はポーランドのクラクフに生まれたユダヤ系作曲家。クラクフの放送局のディレクターをした後、1950年からイスラエルのテルアビブの国立音楽図書館長及び音楽院の教授を務め、1957年にヨーロッパに戻り、ウィーンのUniversal Editionの編集長、国立ウィーン音楽大学の作曲科教授などをしつつ作曲活動に従事。ドナウエッシンゲンやダルムシュタット等の現代音楽祭等で活躍した。日本人の作曲家では久保摩耶子や土居克行がハウベンシュトック・ラマティの下で学んでいる。

ハウベンシュトック・ラマティの特徴はその音楽的思考が新たな記譜法の創出と深く関係している点にある。ところが新たな記譜法は図像的視点で皮相な扱いを受けることが多く、それが音群的音楽の本質に関わるものであることが見過ごされがちである。 

私は吉田秀和の論文「図形楽譜」(『現代音楽を考える』新潮社、1975,pp.172-212、)において演奏の本質と図形楽譜との関わりに関する深い論考に触れ、ハウベンシュトック・ラマティの新しい記譜法の意味(=価値)に気付いた。本稿はそのことをまとめたものである。

以下の構成に基づいている。


 研究の目的
 音群的音楽について

1
  『タブロー第一番』の記譜法概略
 音楽的アクションの5つのパターン
 音楽的アクションの音高関係
 音楽的アクションのリズム構造


 音楽的アクションの特性
 音楽的アクションと特性と構造との関係
 「音群的音楽」的性格と記譜法との関係
 他の作曲家の「音群的音楽」との比較

結び