基本情報

音楽史的視点からの引用として作曲した作品を除いて、私が十二音技法を用いて作曲した最後の作品である。学生時代の1973年秋から翌年3月にかけてスケッチを完成させた。その後に始まったドイツ留学の最初の数ヶ月、特にドイツ語学校に通っていた時期に集中してオーケストレーションを完成させた(地方のドイツ語学校で、学校の予習復習以外になにもすることがなかったので)。オーケストレーションの際にはヒンデミットの管弦楽曲をおおいに参考にした。

完成した直後にドイツでの作曲の勉強が本格化し、以降、今日に至るまで、十二音技法という時代遅れの技法に恥ずかしさを感じて発表する気をなくし、ずっとひきだしの奥にしまっておいた。

2016年の大学退職後、これまでに書きためた作品を整理すべきひきだしから出してみると、「意外によく書けている」と自分でも感心した。そこで手直しを始めた。三楽章制の曲だったが、進行がまどろっこしい感じを与える第1楽章を思い切って削除し、緩—急の二楽章制にした。二管編成管弦楽のための、演奏時間11分ほどの作品。演奏されるアテはないが、僥倖を願って作品情報を公開する次第。

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解 説

この作品の基礎音列は以下の通りである(譜例1)。

 譜例1

第一楽章は変奏曲形式。音列(O1)による主題がファゴット独奏で提示される(譜例2a-b)。主題の旋律線が明確に提示されるのは音列(O1)の9番目の音まで。10から12番目の音は和音や対位句、経過句として他の音列に組み入れられる。

譜例2a 譜例2b

その後トランペット独奏にてこの主題が変奏され、高音弦楽器とフルートのユニゾンによって変奏される(譜例3a-b)。

譜例3a  譜例3b

いくつかの変奏を経て金管楽器の咆吼を背景に高音弦楽器のユニゾンに劇的に変奏される(譜例4)。

譜例4

第二楽章はロンド形式。非常に速いテンポの音楽。冒頭の序奏的楽句の後、低音弦の刻みの上にカノン的にロンドの主題Aが提示される(譜例5a-b)。

譜例5a 譜例5b

主題Bは二分音符による単純なリズムの掛け合いがフルートと低音弦の間でなされる。その時の伴奏音型が直後に主声部となりクライマックスを形作る(譜例6a-b)。中間部主題CはAの動的性格と対比をつくるべく変化の少ない同音反復を主とする。

譜例6a 譜例6b

十二音音楽の難解さを回避するために第二楽章では拍節的で単純なリズムを基調とし、管弦楽の演奏効果、特にフォルテの派手な盛り上がりを随所に用意し、最後は景気よく派手に全奏にて終わる(譜例7)。

譜例7