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《セダーの悲歌》ソプラノとピアノのための3つの歌
Elegy of Seda  Three Songs for Soprano and Piano

  • 【演奏時間】10分【作曲】5【初演】2007.7, 福岡市あいれふホール, 西洋楽器が奏でるラーマヤナの世界~中村滋延新作室内楽の夕べ, 中俣明美,山本佳代子【出版】マザーアースN1009FR

2007年の作曲当時、この作品は架空のオペラの中の 「アリア」のつもりで作曲。 オペラの題材は『リアムケー』。 リアムケーとはインド起源の叙事詩「ラーマヤナ」のクメール語(カンボジアでの公用語)での呼称であり、その中の重要登場人物セダー(シータ)がこれらのアリアを歌う。

作曲者はカンボジアの伝統芸能によって最初にラーマヤナについて詳しく知ったため、作曲当時はクメール語の呼称で登場人物を捉えていた。

架空のオペラは2017年にオペラ『ラーマヤナ』と現実のオペラとして完成した。この3つの歌はそのオペラの中にほぼそのままの形で取り入れられている。オペラは2018年秋に初演予定。

第 1曲「金色の鹿をつかまえて」は、セダーが魔王リアップ(ラーヴァナ)の部下モハリクが化けた黄金の鹿に誘惑されるシーンで歌われる。黄金の鹿はその怪しい香りによっていつもは冷静なセダーの正気を奪う。セダーはリアムに執拗に鹿をつかめるように頼む。それに根負けしたリアムがセダーの側を離れた隙に、セダーはリアップに攫われてしまう。

第 2曲「捕らわれたセダー」はリアムヘ(ラーマ)の謝罪の気持ちと、自分を誘拐し幽閉したリアップに対する憎しみとを込めて、リアップの執拗な要求を必死に拒んだ直後に歌われる。

第 3曲「あなたを待ちます」は、 幽閉されているセダーの面倒をみるソチエタ(リァップの弟ピペークの妻だが、 彼女はリアップをうらんでいて、 セダーヘは同情的)への言葉、 リアムの命を受けてセダーの様子を見に来たハヌマーンヘの言葉、 リアムとの楽しい生活をセダーが思い出す瞬間、 セダーを救うためにすぐ近くで戦っているリアムに対して呼びかけるセダーの言葉が、 それぞれ歌詞になって、歌われる。