佐賀県有田町(陶芸で有名な有田)で2月から3月にかけていくつかのアートイベントが行われた(現在も行われている)。そのうちの,焱の博記念堂コンベンションホールで催されたシンポジウム「映像表現とメディアアート,先駆者が語る表現の今」に参加した(2月28日)。シンポジウムを聴き,関連イベントの中の「extern Audiovisual *play(string_title)」を聴いた。
シンポジウムは佐賀県出身の3名のメディアアーティスト(八谷和彦,小島淳二,真島理一郎)をパネラーとして,デジスタでおなじみのNHK解説委員の中谷日出がナビゲイトする形態で行われた。アートというよりも,どちらからと言えばエンターテイメント的な色合いが強い作品を制作するアーティストたちであって,私のような「アート/芸術」という言葉に特別な思い入れのある旧世代の人間にとっては,話しそのものは面白かったものの,内容はもうひとつ「ピンとこない」。パネラーたちがとても若く見えたのは,こちらの老化の兆候か?
関連イベントの「extern Audiovisual *play(string_title)」はシンポジウムの後に行われたが,聴衆が激減。シンポジウム自体も聴衆は100名もいなかったように思うが,このイベントは最初20名ほどで,はじまって10分もしない間に10名以下になってしまった。シンポジウムのパネラーたちも開始直後にいなくなってしまった。出演者の表現に対する意気込みを知っているだけに非常に残念。また異常に客の少ないイベントに客として参加するのはちょっとお尻のあたりが落ち着かない。
さて,この関連イベント「extern Audiovisual *play(string_title)」では,heirakuG,古田伸彦,的場寛と,また事前のチラシ等の告知にはなかったが小山桂の計4人の作品が上演された。開始前のMCで小山桂の追加があったことはわかったが,具体的にどの順番で演奏するかが伝わらなかった。仮に演奏順が告知されていたとしても,演奏が始まると作品の特定をしたくなる。演奏順を記した臨時のプログラム紙片を配布するか,MCで作品を告知してほしかった。実はheirakuGを除く古田・的場・小山の3名は私の研究室所属の学生で,研究の一環としての作品を提示しており,そのことからも上演のために研究室所有の機材を貸し出している。それだけに,学生個々の優れた作品が誰の作品であるか,聴衆に分かってほしいという思いが当然のことながら私にはある。シンポジウムのパネラーや中谷さんはいなくなったが,本来ならば,彼らにアピールするためにもどの作品が誰の作品であるかを確実に明示すべきではないか。
今回,2番目に演奏された小山桂の作品が,私はもっとも気に入った。鉄粉を磁石で動かす様子をプロジェクターで大写しにした作品で,動かす操作をテキスト入力(ライブコーディング)で行う。音を伴って鉄粉が動く様子は,まるで群衆劇を見ているようであった。ただし,この作品を小山桂の作品と特定して鑑賞していた人はごく少数であったに違いない。私としては残念である。