CDで桂米朝の落語を聴いた(「特選!米朝落語全集」Toshiba)。話しをじっくり聞かせて,深く味あわせることに関しては右に出る者はいない。とにかくうまい。表面的に笑わせようという気などさらさらない。また,彼自身のキャラクターは「お笑い」とは関係ない。きわめて端正である。それでも彼の落語は大笑いを誘う。私と家の者は聴きながら大笑いの連続であった。落語の内容が面白いのである。だから,聴き終わった後でも,思い出して何度も笑える。
 その面白さは,人間が生きる際の人間の業のようなもの(弱さ)をあぶり出してしまうところにある。皆が持っている業である。
 米朝は多くのネタを自身で発掘したと聞く。すでに語る人がいなくなり,文献だけが残っているものを自身で見つけてきて,それを自身で練り上げて語る。
 聴いた中で特におもしろかったのは《軒づけ》である。これは素人義太夫の話しで,その義太夫語りの下手さ加減が実にリアルに演じられる。このあたりは落語家自身が義太夫を語れなくてはリアルに感じさせることが出来ない。米朝自身,かなり義太夫に造詣が深いようだ。
 他に《宿屋仇》も秀逸。町人と武士の対比が見事。
 全集の中のCDを皆,買ってしまいそうだ。