12月11日,九州大学大橋サテライトLUNETTEで九州大学ADCDU(先導的デジタルコンテンツ創成支援ユニット)主催のシンポジウム「メディアアートのアクチュアリティ:が催された。第1部の講演はYCAM(山口情報芸術センター)のキュレーターの阿部一直氏,講演後の第2部の対談は阿部氏と音楽家渋谷慶一郎氏との間で行われ,最後に第3部として私の司会で大学におけるメディアアート教育について討論した。

YCAMは日本ではメディアアートに特化した芸術館で,メディアアートの展覧会やコンサート,演劇上演,映画上映を積極的に展開している。企画の中心にいるのが阿部氏である。その阿部氏の講演はYCAMの立ち上げから現在に至るまでの活動の報告という形態を取りながら,メディアアートの今日的意義を具体的に語るものであった。YCAMには何度か足を運んだことがあったが,この講演に接することによってさらにYCAMへの積極的関心が私の中には湧き上がってきた。おそらく会場の聴衆も同様であろう。福岡の近くにこうした活動を行っている施設があることを本当にありがたく思う。多くの人にYCAMに足を運んでもらいたい。

渋谷氏は電子音響アーティストというイメージが私の中には強かったのだが,その前日に行われたコンサートでクラシック音楽の系列上の彼のピアノ曲を聴いたことによって,彼の音楽的バックボーンの豊かさにあらためて気付くことになった。強い信念にもとづいた彼の芸術的主張には彼の今後の可能性を十分感じさせるものであったし,私自身,多くの刺激を受けた。

第3部はADCDUの催しである関係上,いわば付け足しのようなものであったが,それでも阿部・渋谷氏からの大学でのメディアアート教育に関する提言は,大学の現実に飲み込まれてしまいそうになる私にとっては,非常に大きな励ましになるものであった。